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粉飾決算は誰のため

「粉飾」という言葉を聞いたことがありますか。辞書で引くと「うわべを飾ること。とりつくろって立派にみせること」とある。いま新聞やニュースで取り上げられているのは粉飾された決算書である。一般的に粉飾決算とは、会計の原則に基づいて作成された決算書の売上を増加させたり仕入や経費などを減少させることにより利益(儲け)の金額を意図的に増加させ、元の決算書の数字より見栄えをよくする行為を示す。

決算書とは1年間(事業年度)の結果である。その結果(成績)が社長ひとりのためにあるのなら、学校で通信簿をもらったときのように一喜一憂すればいいだけである。

しかし実際には決算書は株主や銀行、取引先など対外的に利用される場合が多いのである。その成績が悪ければ、株主からは経営努力が足りないと指摘されたり、株主自身が会社から離れていく可能性がある。銀行からは返済条件や融資条件が厳しくなるかもしれない。また取引先からは支払条件の変更(現金決済など)や仕入(ロット)数の減少を通告されるかもしれない。

そこで「だったらよりよく見せよう!」と考えるのは浅はかである。「粉飾」と書くと軽いイメージがあるが、実際には偽装(騙し)であり、会社法上の違反行為、証券取引法上の虚偽記載罪、要するに犯罪である(ただし利益を増加させる粉飾については税額が増加することから、税務署から指摘されることは少ないかもしれない)。

さてここまできて「悪い行いをしている意識」を横に置いておけるとしたら、粉飾決算を行っている会社からしてみるとバレさえしなければ物事がうまく進んでいくように思える。しかし本当の意味での苦労はここから始まるのである。

粉飾決算とは本来の経営成績を無理やり捻じ曲げているのだから、翌期においてそれを元の決算の数字にし、されに良い成績にするためには2倍の努力が必要になる。しかし1倍の努力をできない会社が2倍の努力などできるはずがない。つまりは前期の「粉飾」と帳尻を合わせるために再び粉飾を行うことになる。そして対外的には粉飾を重ねるごとにその罪の度合いは大きくなっていく。

少し視点を変えてみると粉飾は計画性を持たない借金に似ている。つまり本来の自分以上の生活を行うために借金をする。その後収入が急激に増えるか生活の量や質を落とさない限り、こんどはその借金の返済と生活のレベルを維持するためにまた借金をすることになる。そうなるとたいていの場合後戻りすることはできない。

もうひとつ財務的な視点から話をさせていただくと利益を増加させる粉飾に伴い、所得税や消費税などの税額が増加することがある。また前期以前の決算書中の数字のバランスが変わることがある。本来業種を追加や変更したり、大口の得意先でも開拓しない限り、そのバランスが大きく変わる可能性は少ないのだから。

決算書をよく見せたい気持ちはよくわかる。だからこそ良い成績を残すために日々努力を重ねていくのではないだろうか。100歩譲って粉飾という行為が悪くないとしても、そのための努力の方向性は間違っている。苦し紛れの記者会見上の「会社のためにやりました」は通用しない。決算の数字の付け替えが簡単にできるのなら、その努力する気持ちも必要性も萎えてしまうような気がしてならない。自社の決算書が対外的にも存在することも事実であるが、やはりまずは経営者である社長さんのためにあるのだとつくづく思う。

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