通勤費と出張旅費
以前の税務情報で「通勤手当の再確認」をテーマにしましたが、平成24年1月1日以降の分について改正がありましたのでお伝えいたします。
従業員等の通勤費については、その手段が公共機関を使う場合とマイカーを使う場合とで所得税法上非課税となる限度額が決められています。公共機関を利用する場合には、通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的な方法により計算された通勤定期券1ヶ月あたりの金額となっており、その上限額は10万円とされています。またマイカーや自転車による通勤の場合にはその片道の通勤距離により1ヵ月当たりの限度額が定められています。(下表)
◆非課税となる1ヵ月当たりの限度額の表
片道の通勤距離 | 1ヵ月当たりの限度額 |
2km未満 | (全額課税) |
2km以上10km未満 | 4,100円 |
10km以上15km未満 | 6,500円 |
15km以上25km未満 | 11,300円 |
25km以上35km未満 | 16,100円 |
35km以上45km未満 | 20,900円 |
45km以上 | 24,500円 |
いままでの規定ではマイカーや自転車により通勤をしている人のうち、片道の通勤距離が15キロメートル以上の人が、電車やバスなどを利用して通勤しているとみなしたときの通勤定期券1ヵ月当たりの金額が、上記の表の限度額を超える場合はその金額を支給することができましたが、改正後はこの規定はなくなり、マイカーや自転車による通勤については上記の表の限度額でのみ非課税の通勤費として支給することができます。そして限度額を超える支給部分については給与として課税されることになります。
一方出張旅費はどうでしょうか。サラリーマンに対する出張旅費は、その出張に必要な旅行費用に充てるための実費弁償分となるので所得税法上は非課税である、というのが基本的な考え方です。本来はすべての費用を実費で精算すべきかもしれませんが、事実上難しい面もあり旅費規定を設けて宿泊費や食費、交通費などを含めた金額で支給している会社もあります。ただしそこでも気をつけなければいけないのは「通常必要であると認められる金額」が基本になっているということです。また役員や使用人を通じて適正な基準によって計算されたものであることも必要になります。距離や時間(日数)、出張費に含める費用やグリーン車などの特別料金の付加なども考えた上で旅費規定を作成し、同規模・同業種において支給されている旅費とも照らして相当額であるか見極める必要があるでしょう。
税務署から出張旅費が高額だと判断された場合、それが役員に対するものならば役員賞与となり損金としては認められません。また否認された出張旅費については個人の給与に加算され所得税が課せられることになります。その上会社が消費税の課税事業者であれば給与は課税仕入になりませんので、その分消費税も増えることになります。
通勤費や出張旅費は毎月発生しますが、その処理を誤っていると後になって数年分の修正を求められることもあります。もう一度従業員各人の通勤ルートの確認や旅費規程の見直しをすることをこの機会にお勧めいたします。
← 一覧に戻る
※当ホームページはすべて税込で金額を表示しております