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競馬判決から見えてくるもの

昨年の11月頃話題になり、今年の5月23日に大阪地方裁判所で判決のあった競馬騒動は、まだみなさんの記憶の中に新しいのではないかでしょうか。事件のあらすじは次のとおりでした。
大阪市内に住む元会社員の男性が、競馬で儲けた金を申告せず、平成19年から21年の3年間に約5億7,000万円を脱税したとして、所得税法違反の罪で大阪地裁に起訴されました。一方男性は、トータルで約1億4,000万円の利益しか得ていないと弁護士を通じて控訴していました。

・事実
平成19年から21年の間に男性会社員が受けた競馬の配当金は約30億1,000万円、この間のすべての馬券の購入費用は約28億7,000万円でした。 
会社員は平成16年以降競馬を始め、過去のレース戦績を分析して市販の競馬予想ソフトを改良した独自のシステムを使って着順を予測。JRAのA-PATと呼ばれるインターネット口座に100万円を元手として入金し、会社が休みの土日に各地で開催されるレースのほぼすべての馬券を購入していました。
会社員には妻子がおり、年収は約800万円。競馬で得た利益の約7,000万円を株の投資につぎ込みましたが、そのほとんどは平成20年のリーマンショックで失ったそうです。
会社員は当初、競馬の収支が黒字となったことから確定申告をすることを考えましたが、外れ馬券を経費とできない一時所得の計算方法だと、自分の手元に残っているお金よりも多額の税金を支払わなければならないので、怖くて申告をしていなかったといいます。

・一般論
一般的に競馬の払戻金やパチンコによる収入は一時所得に分類され、その収入を得るのに直接かかった費用のみを経費として差し引き、特別控除額50万円を控除した額の1/2が課税所得となります。給与所得者の場合は、給与所得以外の所得が20万円以上だと確定申告を行う必要があるので、競馬の場合だと配当金額からその直接の購入馬券の費用を差し引いた額が90万円以上なら確定申告を行う義務が生じます。ただし売上の多くが公共事業やスポーツ振興に充てられる宝くじとサッカーくじは申告の対象とはなっていません。

・結論
平成25年5月23日の判決で、今回のケースについては馬券の払戻金に係る所得は雑所得として分類されました。当り馬券以外の外れ馬券の購入費用も経費の対象となるとされ、平成19年から21年の総所得は1億6,000万円、所得税額は5,200万円と認定されました。無申告については正当な理由とは認められず、所得税法違反として有罪となりました。

今回のケースではその金額が大きいため注目を集めましたが、見えてくることも多いと思います。
法律では競馬の払戻金による所得の申告をすることになっていますが、給与所得者の申告要件(儲けが90万円以下なら申告不要)もあり、実際に申告をしている人はほとんどいないと思われます。しかし今回のケースは馬券の購入から配当金の受け取りまで同じ口座を使ったため、その内容の立証が出来たという側面もあります。また会社員のソフトを使った馬券の購入方法は、「一日の購入金が1,000万円以上」「ほぼ全レース分を無差別的に購入」「配当で得た利益を次のレースの原資として継続的に利用」などの理由から「所得源泉性」「投資目的」などが認められ、所得税基本通達に一時所得として掲げられている競馬の払戻金の扱いとは別物だという判定が下ったようです。

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